2018年06月04日
「CSUN 2018 参加報告セミナー」参加レポート
4月下旬、ミツエーリンクスさん主催の CSUN 2018報告会を聴講してきました。
CSUN とは、CSUN Assistive Technology Conference という毎年3月にアメリカで開かれるアクセシビリティに関する国際カンファレンスです。
ここでは 2018年の世界のアクセシビリティ動向や各国や各企業がどのように対応してるかセッションが行われます。
Amazon、Adobe や Google、Microsoft など大手企業がスポンサーになっており、アクセシビリティへの関心がうかがえます。
20セッションが別部屋で並行して同時に行われたり、企業のブース展示あったり、セッションとは別に基調講演があったりと盛りだくさんだった様子。
株式会社ミツエーリンクスの木達さん、株式会社インフォアクシアの植木さん、サイボウズ株式会社の小林さん、株式会社コンセントの秋山さんが登壇されました。
木達さんによるセッション聴講の報告
- 1. Consistently Accessible: Building Better Websites with Pattern Libraries
- 最近デザインシステムという言葉をよく聞くようになったこともあり、それに関係するセッションとのこと。 レスポンシブ対応のためにフロントエンドへの負荷やサイトが複雑化するので一貫性を保つことやメンテナンスが難しくなった。
そこでパターンライブラリー(コード断片、使い方ガイドライン、ライブラリー(CSS、JavaScript))を作成し集約することで、一貫性のあるインターフェースが保たれ、誰にでも見えやすくなるので、ユーザビリティとアクセシビリティに貢献している。
- 2. Mobile Accessibility in WCAG 2.1 and Beyond
- 2018年6月に WCAG 2.1が勧告になり、新しい達成基準が追加される。ここではモバイルのカテゴリーに着目して変更点などを紹介。(2018年4月24日に勧告案に)
モバイルデバイスが主流になり使う環境が様々になってきたため、モバイルポリシーが各国で作られるようになり、 W3C でもまとめる必要がでてきた。
現在は17の達成基準が追加されている。(シングル5、ダブル7、トリプル5)
ロービジョン、認知障害、モバイル関連する達成基準で追加予定のもの
- スマートスピーカーで使用するスピーチインプット
- タブレットなどのタッチスクリーン
- 画面の縦横関係なく使えるようにするデバイスセッティング(画面の縦横)
- 画面の大きさに応じてあらゆるバリエーションをカバー
- タッチスクリーン対応のポインターの操作性、キャンセル方法など
- ボタンサイズのターゲットサイズ
- テキストではないオブジェクトのコントラスト
植木さんによるセッション聴講の報告
- 1. WCAG 2.1と Silver
- W3C は WCAG とは別の WCAG、ATAG、UAAG を盛り込んだ Silver というガイドラインが平行して進行。W3C の次期アクセシビリティガイドライン:AccessibilityGuideline(AG =元素記号:銀)といわれているそうです。この AG は2020年を目途に公開予定とのこと。(早ければ2018年度中に草案が公開予定)
WCAG 2.1は2018年6月に勧告、マイナーアップデート予定しており、2020年に WCAG 2.2へのアップデートを予定。ただ2.0は非推奨になるわけではなく、使いたい人はそのまま使えるとのこと。
- 2. Amadeus and American Airlines: From User Tests to an Inclusive Website
- アマデウス(AMADEUS)という旅行業界に特化した予約システムを扱っている企業のユーザーテストについてのセッションでした。
ガイドライン ⇒ ユーザーテスト ⇒ トレーニング ⇒ デザイン、開発 ⇒ ユーザ-テストという工程でレベル AA の品質を確保。(米国では航空会社は A 達成が基準)テストの内容も経験談やインタビュー内容から吸い上げたりしているそうです。
問題点の改善の一例
- 色に敏感な人のためのはっきりとした黒と白のコントラストではなく、濃いめのグレーと白など強すぎないコントラストにする。
- 認知症などでみられるテストで発見した制限時間の回避、文字の視認性やモーダルの開閉時のフォーカス位置の制御。
- WAI-ARIA を使って視覚障害者でもスライダーが使えるようにした。
- 3. チェックツール
- WAVE:WebAIM という団体が作っている検証ツール
- DEQUE
- LEVELACCESS:サイト全体の品質を管理するツール
- JAWSInspect:JAWSの読み方を教えてくれるツール
(要素を読み上げる(ボタンならボタン)ところを教えてくれる)
小林さんよるセッション聴講の報告
ホテル内の施設には白地図があったりセミナーには要約筆記による情報保障があったりと、いろいろと配慮がみられたようです。また AmazonEcho や GoogleHome など広く使われるようになってきたボイス UI に関するアクセシビリティもあったそうで、さすがアメリカは進んでいますね!
- 1. Accessibility in Agile Scrum Process
- アジャイルスクラムでの開発プロセスのアクセシビリティ
- 2. WCAG 2.1 SUCESS Criteria
- WCAG 2.1の追加される1.4.10、1.4.11、1.4.12の達成基準についての話。
- 1.4.10 Reflow:画面の大きさに応じてあらゆるバリエーションをカバー
- 1.4.11 Non-text Contrast:非テキストコンテンツ以外のコントラスト比の確保
※図など見えにくいものも多々あるので、これができたのはよい傾向だな、と個人的に思いました。 - 1.4.12 Text Spacing:行間や文字の見え方について
コンセント秋山さんよるセッション聴講の報告
- 1. A11y Wars: Rethinking industry-Wide Interpretation Differences
- アクセシビリティの解釈の違いと問題について複雑さや職種の違いによる解釈
解釈の違いについては私個人も感じていた問題で、これについては社内でも解消していきたいと思い、いろいろと模索中です。
- 2. Beyond Compliance: Designing & Measuring Web Experiences for Users over 65
- 高齢者のアクセシビリティの注意点と取り組み
高齢者がもつ半分ぐらいはスマホやPCで操作しているのでユーザビリティテストにシニアアクセシビリティの問題を含め、プロセスの段階からデザインチェックリストを作成し、チェックしている。
パネルディスカッション
出されたキーワードごとに登壇者全員でディスカッションする形式でした。
キーワードその1:WCAG 2.1
モバイルアプリの英語化の場合の配慮や Silver が本当にでるのかなどが話題に。JIS は WCAG 2.1になったとしても、国によって WCAG 2.0のままでいくなどわかれていきそう。(アメリカは2.0、中国は2.1など)中国では W3C が北京にできたりと web 技術に熱心になってきている。
キーワードその2:モバイル
モバイル領域の達成基準が増えてきたこともあり、アクセシビリティチェックをどうしていくかが課題。
2.1ということではなくて、タッチ領域などすぐに取り入れられるものがあれば、積極的に取り入れるのは良い。障害者だけではなく、アクセシビリティは広い領域をカバーする、といういいイメージになってきたのではないかと思っている。(小林さん)
キーワードその3:テスト
各社でどのような形でテストしてるのか?
- 品質管理部がレベルAまで、レベル AA からはアクセシビリティ部門が対応している(ミツエーリンクス)
- 案件ごとに個別対応でチェックリストをつくっている(コンセント)
- プロダクトごとに品質保証を行っている(サイボウズ)
キーワードその4:VPAT(Voluntary Product Accessibility Template)
アメリカでの508条のアクセシビリティの評価シートがあり、ウェブサイト・ハード・ソフトウェアにも対応しているが、これが昨年から WCAG 2.0に対応。アマゾン、マイクロソフト、アップルは上記を公開している。
米国向けにモバイルアプリの開発を進めているサイボウズさんでは社内に働きかけをしている段階とのこと。
キーワードその5:ゲーム
ゲームに関するアクセシビリティ対応が多くみられたようで、文字サイズ、コントラスト、字幕、片手で操作できるコントローラーなどの紹介があったそうです。
ソニーアクセシビリティへの挑戦(YouTube)の紹介がありました。また昨年に比べてゲームに関するセッションが増えてきたとのこと。
キーワードその6:インクルーシブデザイン
最近はアクセシブルデザインをインクルーシブデザインという言い方をする場面が増えてきているようです。
アクセシビリティでいうと、ガイドラインの基準をみたすのではなく使いやすさを確認しながらデザインするが、アクセシビリティ=障害者向け、という意味合いをなくすために多くの人にメリットがあるというニュアンスでインクルーシブ、という言い方をしているところもあるそうです。
キーワードその7:2018年 web アクセシビリティ動向
WCAG 2.1はそんなに焦って対応する必要はないが、モバイルやウェブアプリのアクセシビリティが盛り上がりそう。 取り組むこと自体は普及してきたが、どうチェックしていくか、ということが大事な局面になる。
まとめ
今回の報告会では新しい WCAG 2.1の話題やゲーム、ツールといった新しいワードが出てきており、少しずつアクセシビリティ対応が広がっているのを感じました。ゲームに関しては音声で操作できれば手があいていいな、と思ったこともあり今後がとても楽しみです。
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