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2018年10月31日

「アクセシビリティセミナー2018」参加レポート

CEATEC JAPAN 2018 でウェブアクセシビリティ基盤委員会( WAIC )によるアクセシビリティセミナー 2018 に参加してきました。今回は WAIC の作業部会 1(理解と普及)が中心となって企画したセミナーとのことで、私は障害当事者の日常の利用方法やデモンストレーションのセッションを聴講しました。

Web アクセシビリティ:わたしたち、身近なこういうところで困っています

まず最初に進行役のユニバーサルワークスの清家さんからお話がありました。
障害種別のインターネット利用率は視覚 9 割、聴覚 9 割、肢体不自由 8 割、知覚 5 割と、障害の有無にかかわらず、インターネット利用は進んでいるそうです。( 2012 年調査)
視覚障害者の 9 割がインターネット利用者ですが、web 上に何かしらのバリアがあった、最後まで手続きできなかったなどの声があがっていたという調査結果があるそうです。全体で 7 割以上の利用者が困難を感じており、まだ解決されていない課題となっています。

諸熊 浩人 氏(株式会社 U’eyes Design、作業部会 2 招聘専門家)

中途失明で、視覚障害者としては 17 年。web 利用は失明してからだそうで、趣味は視覚障害者向けのゲームソフトの作成、そのゲームを配布するためのホームページの運営、 DTM (デスクトップミュージック)作成とのこと。また日々の業務は WAIV というウェブサイトの品質を見える化するソフエトウェア開発、アプリに搭載するサウンドデザインなど多岐にわたります。

利用と苦労

実際の利用方法は、画面は見ずにスクリーンリーダーを利用、スマートフォンではタップ部分を音声で確認しながら利用。視覚障害者用のブラウザを使って内容をテキスト化するものも使っているそうです。
最近は web サイトが読みやすくなったり、読み上げるブラウザの技術もよくなってきたりと、前に比べて困ることが減ったそうです。個人的に画期的だと思ったことは、パソコンで読めなくてもスマートフォンやアプリを使うことで読み上げが可能になり、代替えがきくようになったというお話です。

やはり困ることの一番最初にあげられたのは、マウスのみの操作でした。そのほかにも、一定時間経つとページが自動更新する場合も更新箇所が確認できず、また変わったことも気づくことができないとか。これは JIS X 8341-3:2016 の達成基準にもありますが、一時停止ボタンをつけるなど誰もが利用しやすいようになっているといいですね。

ページを開いてからコンテンツを読めるまでには、約 15 秒かかるそうです。また、ページが重い場合は表示されてるところだけ読み上げている状態になってしまうそうです。
健常者が 1 分間に 600 文字を読む速度に対し、1 分間に 250 文字ほどの速度でページを読むため、思っている以上に読むのに時間がかかります。1 日にスクリーンリーダーで 7、 8 時間も音を聞いているので、耳が疲れるそうです。

工夫している点

論文や文献調査などで PDF の閲覧をするそうですが、PDF のテキストを表示通りに取り出せないこともあるため、技術力のある諸熊さんはなんと文字を PDF からテキストを取り出して読むソフトを作成してしまったそうです!
スマートフォンの方が簡素化している場合や、アプリを使うと更新履歴が通知されるのでそこを読むだけで知りたい情報をすばやく得ることができるので、最近はスマートフォンを利用することが多いそうです。

スケジュール入力はマウスで空欄をクリックしないと登録できません。選択して読み上げているところにカーソルがくることがわかっているので、横にカーソルをスライドさせて使っているそうです。表やカレンダーはピンポイントでクリックしなければならない場合が多く、それが困難に感じるそうです。見えていないこともあり、人に教えてもらわないと画面構成がわからなかったり、理解できなかったりすることもあるとか。

伊敷 正英 氏( Cocktailz、作業部会 2 主査)

ロービジョンの視覚障害者の方で、昨年もアクセシビリティセミナーでお話をお聞きしました。
最近楽器を始めたそうで、習ったり YouTube で音をきいたりして練習しているそうです。またボクシングジムに通い始めたそうです。 ジムの場合は視覚障害という理由で、電話の時点で断られたり、見える人と一緒にきてほしいと言われることも。
こういう部分に関しては、まだまだお互いの理解を深める必要がありそうですね。

利用と苦労

パソコンは Windows で拡大鏡で拡大と色を反転させて(写真ネガポジ)利用。目を数センチのところまで画面に近づけるため、腰が痛くなるとのこと…
iPad は kindle 用として利用、iPhone とともにどちらもアクセシビリティ機能の色の反転を使って使用。拡大鏡を使うと遠くのものを手元で拡大して見ることができるので、お店や目印などを探す時も利用もしているそうです。いろんな使い道がありますね!
自宅では Amazon Echo を利用して、時間や出張するで行き先の天候などを確認。音楽再生やラジオなどもたまに利用するそうです。

タニタのヘルスプラネットとというアプリで体重管理をし始めたそうで、最初の設定が大変だったり、スイッチがわからず拡大鏡を使ったりしたそうですが、あとはアプリで楽に操作できるとのこと。

旅行予約サイトでのデモンストレーションでは、リンクテキストは読めても、リンクをホバーした時の色のコントラスト比が低いと読めないと同時に、クリックすることができないのでそれ以上進むことができなくなっていました。メニューのドロップダウンのメニューもマウスを乗せておかないと表示されないので操作が難しいですね。

工夫している点

じゃらん net、出先で利用する食べログ、NAVITIME、フロアマップ、駅の構内図をよく利用。行先で見て確認できないので、構内図などはルートなどを頭に入れてから出かけるそうです。

Kindle アプリは、文字拡大しても自動で改行するので指でのスクロールが必要なくて便利!とのこと。私はこの機能を知らなかったので試してみようと思います。
UDCast 言語バリアフリー化サービス。この音声ガイドをダウンロードしていると、そこで映画と同時に音声解説を聞けるというもの。情景だけのシーンもきちんと解説してくれる上にいつでもどこでも好きな時に映画を見に行けることができるそうです。

増井 達巳 氏(合同会社フォース、作業部会 1 委員)

以前はキャノンマーケティングジャパンで web マスターのお仕事をされていた増井さん。今回はなんと「高齢者」の立場からのお話です。

新聞に社告を出した時にお問い合わせの方法を電話番号のみで記載したら、メールで聾者の人から電話できない場合はどうすればいいのか?という問合せがあり、企業が提供しているサービスや製品はいろんな人が使っているということを改めて感じたそうです。
そしてスペースに制限がない web には、すべての情報がどの状態や環境でもアクセスできるようにしたい、と思ったのがアクセシビリティに取り組むきっかけだそうです。

利用と苦労、工夫している点

「世の中の文字は小さすぎて、読めない!」という、読めないことに対する怒りを表現している広告を例にあげてのお話でした。この「読めない」というのは web も同じで、特に企業のサイトはリニューアルが 3 年、5 年ごとぐらいにしかないので、文字サイズが小さいまま公開されているケースが多いといいます。
毎日使うソフトのメニュー画面も高解像度だと小さすぎて見えにくいので、ノートパソコンから外部ディスプレイにつないで大きい画面でみてるそうです。
web サイトを閲覧する際もブラウザで 150 %に拡大表示にしていますが、最近はレスポンシブ対応のサイトも多いせいか、拡大するとメニューやページ構造がスマホ版の画面になってしまい、構造がわかりにくく操作が困難になる、とのこと。

アクセシビリティの対象は誰なのか

もっとも影響受けるのは高齢者、障害者ですが、2020 年には 3 人に 1 人は高齢者になり、2018年4月時点で身体障害者も 936 万人になるなど、配慮すべき人が増えてきています。色覚異常、環境の変化、怪我をした、眼鏡を忘れた、漢字読めない子供など、一時的な障害も含むとアクセシビリティの対象になるうる人は大勢になりますね。
公共施設では目的を果たすために、すべての条件で提供する、というのが配慮であり、スロープ、エレベーター、駅の案内板など多くが配慮されるようになりましたが、web はまだ追いついていないという印象なんだそうです。

ナビゲーションが複雑すぎて操作できない、文字が小さすぎて読めない、内容が難しすぎて理解できない、というのを、完全でなくてもいいので、解消していくべきであり、利用度合いをどれだけ増やすか、というのがアクセシビリティの基本的な考え方である、とおっしゃっていました。

全盲の人のための写真教室の一場面を見ながら、写真を感熱紙用プリンターで出して紙の表面にできた凹凸で立体になった写真をさわることで、景色を感じ取ることや遠近法を理解することができた、というお話がありました。視覚障害者にはカメラはいらない、という判断は製品提供側から勝手に判断してはならないというお話をされていました。

今後の期待

諸熊 浩人 氏

使える製品が増えてきて、生活がかわってきたことを実感、新しいサービスもいつでもだれでもが使えるようになっていくことに期待。
アクセスしやすいサイトを作るために、サイト制作側の環境を整える必要があるため、アクセシビリティ対応を推進する活動をはじめたそうです。1 つ目は公開用 PDF にテキストが埋め込まれていないことを検出する、2 つ目はマウス操作のみの箇所に修正を促す、など。
また、WAIC の活動として、どの実装方法だとスクリーンリーダーで読み取れるかを示していくための活動、資料作成やツールの作成を進めています。

伊敷 正英 氏

Web サイトもそうだが、日常生活の便利さ、サービスの一体化が求められるようになるため、どこでもいつでも誰でも利用できるものが増えてほしい。
将来的に配布資料を読み取れるようになる期待をしているメガネ型デバイスや AI と家電との連携や VR や AR を使ったコンテンツの充実などを期待しています。

増井 達巳 氏

Web サイトを読めるというだけではなく、生活を楽しむために web から情報を得る、web そのものが楽しいコンテンツでということを感じてもらえるようにしていきたいし、する企業を応援したいと思っています。

セミナーを聴講して

今回は実際にデモンストレーションを見せていただいただけではなく、当事者の方が日常生活でどのような問題に直面しているか、どのような工夫で乗り切っているか、などを知ることができる貴重なセミナーでした。
スマートフォンの普及でわたしたちの生活がだいぶ変わってきたことを感じるのとともに、web を利用することが日常生活の一部になってきたことを実感しました。製品やサービスを提供する側として出来るところからアクセシビリティ対応を進めていきたいと思います。

アルファサードの web アクセシビリティの取り組み

弊社では、web アクセシビリティ向上への取り組みとして、無償ツールの提供の他、「 JIS X 8341-3 」への準拠を支援する「 PowerCMS 8341」の開発・提供、各種サポートサービスを行っています。評価版もございますので、実際にお試しの上、安心してお使いいただけます。お気軽にお問い合わせください。

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「 JIS X 8341-3:2016」準拠支援ツール

導入事例:公益財団法人 長寿科学振興財団様 「 Webアクセシビリティへの対応と、PowerCMS クラウドの使いやすさ、運用への安心感が選定の決め手となりました。」

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PowerCMS 8341」が付属し、「 JIS X 8341-3:2016」に準拠したテーマを設定済みの、自治体向けのコンテンツ管理システム
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「 JIS X 8341-3:2010」( WCAG 2.0)の達成基準に基づき、画像の背景色と前景色のコントラストを確認するソフトウェア
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